ながの水辺の会  NPO法人長野県水辺環境保全研究会

千曲川の河川改修の現状

千曲川の河川改修の現状

 千曲川の河川改修は、明治43、44年、大正3年等の相次ぐ千曲川の洪水被害を契機として、大正7年に内務省直轄事業として、第1期改修に着手したのが始まりです。この事業は、主に千曲川に堤防を築く事に主眼が置かれ、昭和16年まで継続され、概ね現在の千曲川の形状が築かれました。その後、昭和20年の災害を契機として昭和23年に改修工事が再開(第2期改修に着手)されました。第2期改修では、千曲川の流下能力の向上と堤防強化(拡幅)、水衝部の護岸工事等に主眼が置かれ現在に至っていますが、千曲川の堤防整備は現在約51%(堤防が必要な区間延長に対する完成堤防の割合)にとどまり、さらに、無堤地区の占める割合が約15%と、整備が遅れている現状です。このような中、昭和57年の支川樽川の破堤、58年の千曲川本川堤防の破堤と2年連続で飯山地方を激甚な災害が襲いました。近年でも平成11年8月の篠ノ井地区での HWL 超過洪水の発生、平成16年10月の台風23号による21年ぶりの大規模出水と相次ぎ、さらに、昨年7月の梅雨前線豪雨では、中野市立ヶ花地先で観測史上第2位の水位を記録し大きな被害をもたらしています。
 特に、平成16年、18年の出水では、1.堤防整備の遅れによる無堤地区での浸水、2.本川の水位上昇による各地での内水被害の発生、に加え、3.千曲川下流部における堤防漏水の発生、4.千曲川・犀川上流部での洪水後半における側方侵食の発生など、治水上の課題が浮き彫りになっております。
 一方で、千曲川には豊かな自然生態系が多く残され、たくさんの方々に親しまれていることから、これらと相まった多自然川づくりが求められています。

 千曲川河川事務所では

  1. 安心して生活できる地域づくり
  2. 詩情豊かで潤いと安らぎを育む川づくり
を基本方針として河川整備を進めております。

平成18年7月出水について

7月15日〜19日にかけて停滞した梅雨前線の影響により、長野県内では各地で記録的な大雨となりました。この降雨の影響により、千曲川・犀川では次第に流量を増し、19日15時50分に中野市立ヶ花地点における水位観測所では、昭和58年の既往最大数位11.13mに次ぐ10.68mを記録し、計画高水位まであと7cmと迫る記録的な出水となりました。特に、今回の出水は梅雨前線による洪水としては過去最大を記録し、洪水継続時間が長時間に及ぶという特徴を持っています。幸いに人的な被害は殆ど発生していないものの、3市1村の11地区201世帯637人に対し避難勧告が発令されるとともに、洪水による水防活動は延べ約5千人に上るなど大きな被害をもたらしました。なかでも、千曲川下流部の飯山、中野、須坂、長野市などでは漏水が21ヵ所も発生しました。また、犀川上流や千曲川上流では洪水後半における引き水の影響による側方浸食により、千曲川磯部や安曇野市柳原における堤防の基礎部洗掘等をはじめ、氾濫の危険がある箇所が5ヵ所にも及び、これを防ぐための緊急復旧が実施されました。このほか、護岸の被災や河岸侵食なども多く、当事務所管内51箇所において災害が発生しました。今後これらの被災箇所において災害復旧工事を行っていくこととしています。

 この災害復旧工事にあっては、再度災害防止の観点から、被災箇所の早期の復旧と出水に耐えうる河川施設の整備はもちろん大切ではありますが、全ての箇所において

      多自然川づくりを念頭に、生態系・景観への配慮を行う。
      工事による河床や河川内の改変を極力小さくする。

ことを念頭に工事を進める必要があると考えています。

 平成16年の災害復旧工事(施工は平成17年度)においても、同様な考え方に基づき工事を進めたところですが、その1例を紹介します。

生態系に配慮した川づくり(工事)の事例

 松本市小宮地先の堤防は空石積み堤防で、貴重種のツメレンゲが生育し、ツメレンゲを食草とするクロツバメシジミが生息することで知られている箇所でした。また、この箇所の河川内にはケショウヤナギが生育していました。この箇所での工事に当たっては、桜井先生、浜先生、長田先生のご指導のもと、

  1. 工事前のツメレンゲ仮移植
  2. 工事終了後の元の場所への植え付け
  3. 河川内の土砂掘削(水回しのため)においてケショウヤナギを避ける

等の対策を行いました。

 また、上田市踏入地先の工事に当たっては、工事に先立ち、魚類の捕獲・移植を行うとともに、河床内の玉石を集積しておいて、工事終了後に元の河床に戻すことにより、工事後の河川への影響を極力小さくする等の対応も行っております。

(文:国土交通省北陸地方整備局千曲川河川事務所 副所長 上原)
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